幽霊犬の備忘録

某市の職員。政治学を齧りジェンダーや経済思想に関心。

2019-01-01から1年間の記事一覧

『負債論』第6章 性と死のゲーム 要約

第6章はなかなか読みにくかった。何より、ティブ族のエピソードの理解が難しい。要約も非常に長ったらしくなってしまったが、あえてこのままで(2300字超え)。 雑にまとめると、要するに、ここでの主張は、「負債の根本には文字通りの「暴力」の存在がある…

反差別の3つの方向性

約半年前にTwitterでフォロワー(後輩)のテルマとした差別に関する議論。 何となくこれは残しておく甲斐がありそうだからブログにしておこうと思いつつ、忘れてた。 今更ながら書き留めておく。 以下、当時の議論。 青がテルマのtweet。 黒が自分。 東浩紀 …

制裁的公表について(明石市の養育費不払の氏名公表について)

養育費不払いは氏名公表 兵庫・明石市、条例検討 | 共同通信 養育費不払いは氏名公表兵庫・明石市、条例検討2019/9/17 18:31 (JST)©一般社団法人共同通信社 離婚相手から養育費を受け取れないひとり親家庭が困窮するのを防ごうと、兵庫県明石市が養育費の支…

『負債論』第5章 経済的諸関係のモラル的基盤についての小論 要約

・交換、負債のモラル的論理は人類学が明らかにしてきた根本的なモラルの原理の1つに過ぎない。(『贈与論』ですら市場経済の論理が侵食しており、現代の社会理論は役に立たない。特に、経済学の占める位置は非常に大きい。)・「互酬性」をキーワードとし…

育休について(その3) 育児は「イベント」ではなく「ルーティン」と捉えたなら、2人目が産まれた際は育休よりも時短勤務が望ましいか?

久しぶりの投稿。 異動してから通勤時間が減って、あんまりブログのネタを考える暇がなく、更新が少ないな。 それはさておき、タイトルのとおり、今回は育休について、また考えてみる。 今回はもうすぐ産まれる2人目の子どもについてだ。 実はこの記事は5…

タダの弊害の続きと『地域再生の失敗学』の違和感

「タダ」の弊害についての呟き - ghost_dog’s blog この前の記事の続き。 地域再生の失敗学 (光文社新書) 作者: 飯田泰之,木下斉,川崎一泰,入山章栄,林直樹,熊谷俊人 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2016/04/19 メディア: 新書 この商品を含むブログ (10件…

「タダ」の弊害についての呟き

80代、老舗のとんかつ屋さん「あたしなんかもう年金を頂いている身でね、お客さんには財布を気にせず腹一杯食べて欲しいんで、多少赤字でもね、創業から値段を変えてないんですわ」40代で中学生2人育ててる同じ町のとんかつ屋さん「意味がわからない 引退し…

『負債論』第4章 残酷さと贖い 要約

・貨幣は商品でもあり,借用証書でもある。コインの表には硬貨の鋳造者である政治的権威の象徴があり,裏には交換における支払価格がある。・物々交換の神話と,原初的負債論の神話は,隔たっているように思えるが,実際はコインの裏表であり,一方は他方を…

育休について(その2) 思考実験ー生活保護受給者が育休を取れるのか?

過去のFacebookの非公開グループでの投稿。 この非公開グループは、「女性活躍」をテーマにした役所の同僚中心のもの。 非公開グループなのでコピペしていいか迷ったが、まぁ、匿名だから良いでしょう。 という訳で、以下コピペ(一部編集あり)。 【質問】 …

「そこでしか出来ない仕事」があるのに「イヤならやめればいい」は無いだろ、という話

●今まで考えてきたこと日本は、メンバーシップ型雇用システムからジョブ型雇用システムへ転換していく過渡期にあるのかもしれない。経団連が「終身雇用もうムリ」と言っちゃったというニュースも大きく報じられた。 そういう文脈もあって、ブラック企業や劣…

『負債論』第3章 原初的負債 要約

●貨幣の国家理論と貨幣の信用理論・ミッチェル・イネス等が提唱し、周縁的地位に追いやられてしまった貨幣信用理論というものがある。それは貨幣を信用とみなす理論で、貨幣は商品ではなく計算手段であり、抽象的な尺度単位に過ぎない、とした。尺度とは、す…

「古典は役に立たなくて何が悪い」という開き直りはイヤだという話

#古典は本当に必要なのか 問題。一時期、Twitterのこのハッシュタグがすごく盛り上がってた時期があって、色々と見ていた。 もともと、古典の必要性については懐疑的だったんだが、特に下記のようなツィートについては自分は素直に首肯できない。 例えば「春…

『負債論』第2章 物々交換の神話 要約

貨幣と負債は同時に登場しており,負債の歴史は必然的に貨幣の歴史である。しかし,主流派経済学のどの教科書にも載っている「貨幣」についての常識は,①原始的な物々交換→②「二重の一致」の問題→③貨幣の発明→④信用経済への発展,であり,負債は二次的なもの…

もし、2〜4歳くらいの男の子が「スカートを履きたい」と言ってきたらどうする?

タイトルのとおり、もし、2〜4歳くらいの男の子が「スカートを履きたい」と言ってきたらどうする?という思考実験的な疑問が湧いた。思考実験というか、いつか実現しても全然おかしくないことだが。 女児を育てる中では、そういう悩みはあまり生じなかった…

育休について(その1) 「なぜ育休を取るのか」と聞かれて戸惑ったという話

自分はかつて(2015年)に育休を取った。 2019年現在、共働き(フルタイム)の妻と一緒に保育園児の子供を育てている。自分が育休を取ったとき、まだまだ育休を取る父親が多数ではない職場で「育休を取って何をするのか?」という意見もあった。そういうこと…

『負債論』第1章モラルの混乱の経験をめぐって 要約

積読だった『負債論』をこれから読んでいく。 負債論 貨幣と暴力の5000年 作者: デヴィッド・グレーバー,酒井隆史,高祖岩三郎,佐々木夏子 出版社/メーカー: 以文社 発売日: 2016/11/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件) を見る 本文だけで600ペ…

映画『Suffragette』(邦題『未来を花束にして』)の感想

AmazonPrimeビデオで配信されていたので、観た。 邦題がクソだという前評判を知っていたが、たしかに、この邦題はミスリード過ぎるので、こういうタイトルにした。 未来を花束にして [DVD] 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店 発売日: 2017/07/28 メディ…

行政法の勉強 行政行為の取消についての疑問

先日,法務の勉強会があった。そのうち,行政行為の取り消しという論点があった。判例は,本来の土地所有者Aと,瑕疵ある行政手続きによって土地を取得するに至ってしまったBとの利害が鋭く衝突する事例だった。(最判昭和43年11月7日) 判旨の要点の1つ…

ケースワークでの「訪問」についての持論

2012年度から2015年度までの3年間、ケースワーカー(生活保護給付業務)を経験した。 あまたの論点や思うところはあるが、今回は、CWの中心業務である「訪問」を効率的、効果的に行うやり方について、持論を書いておきたい。 3年目に、自分自身が課した…

公共サービスのアウトシーシングについて 雑感

先日、水道民営化について「読書会」で議論する機会があった。 本自体は未読だが、下記2冊の本について報告があり、要約を聞くことができた。 水道の民営化・広域化を考える [改訂版] 作者: 尾林芳匡,渡辺卓也 出版社/メーカー: 自治体研究社 発売日: 2019/…

エビデンスとかAIとかについての雑感

Twitterで興味深いというか、共感する呟きを発見したので、それに関連する私見を簡単に書いておこう。 もっとも、今から書くことの大部分は、既に別の匿名ブログやFacebookにも書いたことがあるから、ただの再整理。 さて、まず、その呟きを貼っておく。元は…

アニメ『一休さん』のハラスメント回を批判する

(2/22、ちょっと最後に追記有り) 0 前置き 先日、とある宅飲みで『一休さん』のアニメを観る機会があった。 どうやらYouTubeで期間限定ではあるが公式配信されていたらしい。 (2/15までだったようで、もう観られない) その第28回『つらい修業と鬼の和尚…

SOGIの話の続きとか

0 前回のブログへ寄せられたコメント 前回のブログに対して,知人(大学の後輩)がコメントをくれました。 ghost-dog.hatenablog.com ある問題を「社会モデル」によって乗り越えるという点で障害者運動とウーメンリブが結びついたように、LGBTをめぐる議論…

LGBTからSOGIへ/バリアフリーからノーマライゼーション・ユニバーサルデザインへ

※追記 この記事をベースに、新たに書き直した記事があります。 そっちの方が、書きたいことを余すことなく書けていると思うので、よければお読みください。 ghost-dog.hatenablog.com ※追記終わり 1 LGBTとSOGISOGIという言葉について、とりあえずこれを読…

虐待する親を完全には他人事とは思えない

鴻上尚史 on Twitter: "僕は作家なので想像力はそれなりにあると思っていたのだが、子供を持って初めて「虐待によって殺された子供のニュース」がつらすぎて、なるべくなら見たり聞いたりしたくないという気持ちになる。子供を持つまでこんな気持ちになるな…

アンサーブログ その3 生産性と社会適合者

1 前置き Mistir氏のブログを受けてのブログ(3回目)。 ちょっとネットストーカーみがあって、気持ち悪いなオレ。 ただ、今回のブログに限らず、氏の問題意識には凄く共感できるところがあって、氏のブログを読むと自分も書きたくなるんだよな。 本題に入…

記事感想 WIRED『経済学者・岩井克人、「23年後の貨幣論」を語る』

一時期,WiredのTwitterをフォローしていた時期があって,記事の積読が膨大になってしまっている。気が向いたときに積読を読んでるのだが,かなり面白い記事があった。 wired.jp これまで読んできた本を受けて,貨幣について関心を持つようになった。『貨幣…

落合・古市氏の対談に関する考察―「トリアージ」という例えの不適切さについて

1 前置き 落合陽一氏と古市憲寿氏の対談が、議論を読んでいるようだ。 bunshun.jp 各論者の批判記事はまだほとんど全く読めていない。 荻上 チキ氏の議論のTogetterまとめだけ、とりあえずごくごく簡単に流し読みした状況。 togetter.com そんな状態だが、…