幽霊犬の備忘録

某市の職員。政治学を齧りジェンダーや経済思想に関心。

行政法の勉強 行政行為の取消についての疑問

先日,法務の勉強会があった。そのうち,行政行為の取り消しという論点があった。
判例は,本来の土地所有者Aと,瑕疵ある行政手続きによって土地を取得するに至ってしまったBとの利害が鋭く衝突する事例だった。(最判昭和43年11月7日)

 

判旨の要点の1つとして,取り消しが許容されるか否かは,取り消した場合と取り消さなかった場合の比較考量をすべき,という考え方が示された。

 

ここで,1つ疑問がある。比較考量を行政内部でやった結果,50:50にしか思えないような状態で,判断に悩む場合はどうすればいいのだろうか。更に言えば,取り消した場合も,取り消さなかった場合も,どちらの当事者も訴訟を辞さない,という態度だった場合はどうすればいいのだろうか。


AもしくはBのいずれかから訴訟が提起されるということが分かっておきながら,それでも,取り消すか,取り消さないか,ゼロサムでどちらかの判断(行政処分)をしなければいけないのだろうか。そのうえで,訴訟が提起されるのを座して待たなければいけないのだろうか。

 

それとも,何かしら,ADR的なものを活用して,ゼロサムにならない解決に導くということはあり得るのだろうか。

 

本来,行政処分は法に則って画一的に実施しなければいけないだろうから,安易に,当事者の意を汲んだりする決定は行うべきではない。それは,恣意的な行政運用につながる危険をはらむ。恣意的な運用を排除することによって,法的安定性が担保され,法制度,統治システムへの信頼につながる。
しかし,判旨では,取り消すかどうかという判断に「比較考量」というある意味法外の要素(?)を考慮すべき,されているのだから,そこに至ってしまっては,杓子定規に法的基準をあてはめず,ADR的なものを導入してもいいのではないだろうか。

 

更に問題は,仮に,そういう当事者同士の合意にたどり着いたとして,それを紛争を終局的に解決する決定,判決と同じ効力と位置付ける方法があるかどうか。【合意→行政処分→取り消し訴訟→いやいや,お前,合意したやん!→あれは口約束で,紛争を提起する権利は失われない】なんてことになったらイヤだな。合意→裁判上の和解,的なルートはあるんだろうか。このへんは,民事訴訟法の論点なのかな。超苦手分野(大学でも選択しなかった)。

 

 

時間があれば,調べるかなぁ(と言いつつ,多分調べないパターン)。